• テキストサイズ

イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第54章 一念通天(いちねんつうてん)


平行して…。



兼続は、信長から賜った書状を謙信に届けるべく、
一時も休まず馬を走らせていた。

(安土を経ったのが戌の刻。今は…やっと加賀か。もう丑三つ時だな。)

本来ならば、こんな真夜中に馬を走らせるなど愚鈍としか言いようがない。

月夜で無ければ右も左も解らなかっただろう。

(猿以下の振る舞いだな。)

自嘲気味に笑う。

今、兼続を動かすものは、ひなを助けたいという只その一心だけだった。

(しかし、流石に馬が疲れてきたようだ。少し休ませねば。)

そう思った矢先、頼りの月に雲が掛かった。

(頃合いか。)

兼続が馬の手綱を引き、ゆっくりと歩みを止める。馬は、走り疲れたと言わんばかりに左右に首を振る。

『まだまだ これからだ。頑張ってくれ。』

馬の首を優しく叩き、兼続が下馬し、近くにある木に手綱をくくりつけた。

(ひな…。毒を盛られるなど予想もしていなかったろう。苦しんでいないだろうか。)

側にいてやれない自分が もどかしい。

(いや、俺には俺の大役がある。)

無理やりに、ひなへの想いに蓋をした。



『こんなところにいたのかい?』


(何っ!)

兼続は無意識に刀をぬいた。

声のした頭上を見ると、木の枝に人影が見える。


『何奴だ。』


兼続は素早く左右を確認し、他に気配が無いか探る。

『生憎一人だよ。あたしは他人を信用しない質(たち)でねぇ。』

言葉と共に枝が大きく揺れ、目の前に女が降り立った。

(この身のこなし…くノ一か。)

『あんた、信長の仲間だろう?そんなに急いで何処へ行くんだい?』

女が鋭い目付きで兼続に問う。

『貴様には関係無い。』

兼続が刀を握り直す。

『おやおや、物騒だねぇ。それじゃ、あたしが当ててやろう。

愛しい女子にでも会いに行くんだろ。』

兼続は微動だにしない。

『あぁ!愛しい女子は、今頃 寝床で苦しんでるんだっけか!』

『なん…だと?』

(こいつ、ひなの事を知っている?もしかして…。)


『貴様、安芸で慶次達を襲った女か。』

『如何にも。あたしは鷺山殿に仕える忍だ。』
/ 361ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp