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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第52章 諸行無常(しょぎょうむじょう)


顕如達が、夕闇に紛れ静かに進み始めたのを確認すると、元就は改めて敵の旗印を見る。

(あの紋は浅井家の、それも浅井長政の愛用してる紋だ。

長政は信長の妹を娶(めと)って、織田軍とは協力関係にあった筈。

ってぇことは、俺が毛利元就で、織田と和睦したってことを早く伝えねぇと。)

元就が両手を上げ、ゆっくりと物陰から姿を現す。

『よぉ、聞いてくれ!俺は安芸の毛利元就だ。そっちの将と話がしてぇ。』


すると、1つの影が前に出る。


『私が、この隊の将、浅井長政だ。』


(俺が名乗っても無反応ってことは…間違いねぇな。)

『大っぴらにされてないせいかもしれねぇが、俺達は信長と和睦した。つまり貴様の敵じゃねぇ。

その物騒な鉄砲隊を下げちゃくれねぇか。』

元就の声が暗闇に響く。

『そうか。毛利家が兄上と和睦を…。』

(解ってくれたか。)



『…撃て。』

『なにっ!?』


再び耳をつんざくような砲撃が始まる。慌てて先程の物陰に逃げ込む元就だが、困惑が隠せない。

(なにしやがんだ、あの野郎!トチ狂ったか!?)


『どうせ お前らはここで死ぬのだ。冥土の土産に教えてやる。私が信頼するのは朝倉義景殿、只一人。

私は信長を討つ。あの魔王に味方する者も例外ではない。』


(なにがあったのか知らねぇが、寝返ったってわけか。無駄に敵 作るな、あいつ。)

『ま、そういうことなら、こっちも手加減は要らねぇって訳だな。あらよっ。』

元就が、一台だけ残された荷車から大筒を取り出す。抱えるには多少 大型のそれを、片膝をついて構えた。

『おい、火、入れろ。』

家臣に言うと、家臣は首を横に振る。

『元就さま、この大筒は台座に乗せないと危険です!』

『いいから、やれ!』

戸惑いながら家臣が大筒に火を着ける。


轟音が長政達のいる丘へ飛んで行く。少しの間が空き「ぎゃあぁぁぁぁ!」という悲鳴が聞こえた。

『大当たり~!』

満足げに元就が笑う。


(っつー、予想以上に熱っちいな!しかし、数の差 埋めるには、このくらいやんねぇと。)
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