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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第52章 諸行無常(しょぎょうむじょう)


『はい、かしこまりました。家康さま。』

軽く会釈をして三成が広間を出て行く。

暫くすると、家康に言われた通り布団一式と水差し、ひな用の着替えを何着か持って戻ってきた。

『ありがとう。まさか三成に謝罪と礼を いっぺんにする日が来るとは思わなかった…。

皆にも、俺が大丈夫って言うまで、この広間には近付かないように伝えてくれ。』

『解りました。』

三成は数歩 後に下がると、反転し障子に手をかける。

『…家康さま、どうぞ よろしくお願い致します!』

悲痛な声の後に障子が閉まる。


『解ってる。俺を誰だと思ってるんだ。』

家康は、ひなに着替えを渡し、背中で着替えている気配を感じながら手早く新しい布団を敷く。

『そっち向いていい?』

『あ、うん。着替えたから いいよ。』

新しい着物に着替えたひなの手を引き、布団に入らせる。

『また気持ち悪くなったら、ここに桶を置いておくから気にせず吐いて。

水分は取りながら、ね。いい?』

『解った。色々ありがとう、家康。』

『礼は、まだいい。俺は何も出来てない。』

家康が奥歯を噛む。

『手拭いも置いとくよ。』

家康が、枕元に畳んだ手拭いを そっと置いた。

ひなは それに触れようとするが、なかなか掴めない。

『ひな?あんた、もしかして物が二重に見えてる?』

『!よく、解ったね。そうなの、なんか視界がボヤけてるっていうか。』

(徐々に…いや、確実に症状が進んでる。でも、この症状、見たことがあるような。)

『もう少しで何の毒が解るかもしれない。だから、ひなは とにかく大人しく寝て、症状の進行を遅らせるんだ。』

『家康を、皆を信じて頑張るよ。迷惑かけちゃってるけど、よろしくお願いします。

元気になったら、家康達に たっぷりお礼しなきゃだね。』

ひながニッコリ笑って目を閉じる。

『たっぷり?そ。期待してる。』

ふっと1度だけ笑うと、家康は文机に向かい、医学書を捲りだした。
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