第51章 抑強扶弱(よくきょうふじゃく)
~~~同じ頃、越前の一乗谷城(いちじょうだにじょう)にて。
仄かな丸行灯(まるあんどん)の光が、膝を付き合わせて座る二人の男達の顔を妖しく照らす。
『長政(ながまさ)、覚悟は良いか。』
『はい、義景(よしかげ)さま。覚悟なら疾(と)うの昔に出来ております。』
長政と呼ばれたのは、その顔にまだ幼さを覗かせる浅井家の当主、浅井長政(あざいながまさ)。
対する柔和な顔の優男(やさおとこ)は、信長包囲網を敷く朝倉義景(あさくらよしかげ)だ。
『この戦の相手、お市(いち)殿は ご存知なのか?』
『はい。例え信長は実の兄でも、今は浅井家の嫁。
妻は、臆するなと言ってくれました。』
『気丈な女子よ…、ならば参ろう。この戦、我々にとっても熾烈(しれつ)な争いとなるだろう。
魔王を倒し、日ノ本の平安を我らの手中に収めるために、いざ!』
『はっ!』
静かに戦いの火蓋が切って落とされた。
※抑強扶弱~強い者を抑制し、弱い者を擁護すること。横暴な強者を食い止め善良な弱者を助けること。