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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第50章 当意即妙(とういそくみょう)


二人が、ひな越しに視線を合わせた気配がしたあと、

『『お前が敵から身を守れないからだろう。』』

と、声が重なった。

『うっ…。』

確かに、入り口側からも格子窓側からも、誰かが襲って来た時、ひなでは対処出来ないことは明らかだ。

『で、でも...近いっ!』

『俺はもう寝る。』

兼続は、話は終わりだと言わんばかりに、格子窓の方を向く。

『兼続に何かされそうになったら、すぐに俺の方に来いよ。

優しくなだめてやるからよ。それじゃ、おやすみ。』

慶次も仰向けになり目を瞑る。

(どっちかっていうと慶次の方が何かしてきそう。)

モゾモゾと少しだけ兼続の方に擦りよると、ひなも無理やり目を閉じる。

(こんな状況で眠れないよ。)

そう考えながら暫く唸っていたひなだったが…。


スーッ…スーッ…


規則正しい寝息が聞こえだす。

『寝たのか。』

『寝たな。』

ククッ、と慶次が小声で笑う。

『長旅なうえにトンボ返りだ。疲れたんだろ。』

『そうだな。』

兼続が寝返りを打ち、自分の方に向いている、ひなの顔を見る。

『まったく…無防備な女子だ。』

乱れて顔に落ちた髪を、そっと耳に掛ける。

『それだけ俺達の事を信用してんだろ。男としては嬉しいような哀しいような、だがな。』

頭の後ろに手を組み、困ったように慶次が言う。

『…。』

兼続は先程の事を思い出していた。

(眠る前、お前が俺の方に少しだけ近付いたのを嬉しく感じたのは黙っておこう。)


うーん、と唸りながら慶次が呟く。

『にしても、帰蝶の野郎、なんで ここまで、こいつを狙うんだ。

信長さまを貶(おとし)めたいってんなら、他に幾らだって価値のある輩は いるだろうに。』

その言葉に兼続も賛同する。

『確かにな。こんな小娘に何故ここまで執着するのか、甚だ疑問だ。それとも、他に何か こいつに興味を引かれるものがあるのか…。』

(ん?胸元に何か…。巾着か。おっと、落ちそうだな。)

無意識に兼続が触れようとした時、

『んん…。』

ひなが、ふいに寝返りを打ち、兼続がハッと我に返る。
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