第49章 海誓山盟(かいせいさんめい)
『助っ人?』
ひなが首を捻るのと同時に障子の外から声がする。
『入るぞ。』
障子が開くと、そこには見知った顔があった。
『兼続!?』
慶次が先に驚きの声を上げる。
『久しいな、慶次、ひな。』
捕らえどころの無い表情が懐かしい。
『なんでお前が ここに?』
『宴に誘っても、なかなか春日山城に来ないから、お前らの元に こちらから出向いてやったんだ。有り難く思え。』
(そういえば、謙信さまの名で、そういう手紙が届いたって信長さまが言ってたような…。って、私が火事に巻き込まれたりで、うやむやになったんじゃ…。)
ひなが居心地悪そうにチラリと兼続を見る。
『帰蝶と いざこざがあったのだろう?ならば仕方ない。…体は平気か?』
(火事にあったことも知ってるのかな。)
『はい、平気です。』
『いや、平気じゃないだろう。なんだ?この首は。』
指先で、ふわりとひなの喉元を撫でられ、その感触にピクリと反応する。
(たった今、怪我したのに忘れてた!)
代わりに慶次が告げた。
『やられたんだ。どうも、その帰蝶の手先に、な。』
『そうなのか?』
ひなも頷く。
『慶次らは朝倉義景との戦が近いのだろう。厄介な時に…いや、だからこそか。厄介極まりない男だ。』
『ああ。朝倉との戦のために武器を仕入れに来たんだ。元就は優れた商人でもあるしな。』
慶次か視線だけを送ると、元就は軽く両手を広げ、おどけてみせた。
『ってな訳で、あまり時間がないみてぇだ。慶次達は安土にトンボ返りだが、またいつ帰蝶の手下どもが襲ってこないとも限らねぇ。
俺はまだ尼子との戦の後始末で、ここを動けねぇ。直江兼続、あんたに同行を頼みたい。』
そう言うと、元就が静かに頭を下げた。
(元就さんが誰かに頭を下げるなんて!)
『らしくないぞ、頭を上げろ。元よりそのつもりで来た。』