第49章 海誓山盟(かいせいさんめい)
『そんなに不安そうな顔をするな。帰蝶の件も引き続き調べる。
まずは、対・朝倉用の武器調達からだ。』
慶次に言われ、
『うん、そうだね。』
と、勤めて明るく答えると、ひなは胸元から手を離す。
(実は…懐に入れてきちゃったんだよね。)
帰蝶に渡されたヒ素だが、捨てるに捨てられず、かといって 無造作に その辺に入れておくのも…と手製の巾着にしまいこんだ。
そしてそれを何処かに隠すことも、ままならず持ってきてしまったというわけだ。
(巾着から出さない限りは誰も気付かないだろうけど。)
暫くすると、二人の待つ部屋に食事が運ばれてきた。
『大したもんはねえが、ゆっくりと食ってくれ。』
目の前には色とりどりの海の幸が並ぶ。
(えぇっ!お刺身に煮物に焼き魚、ハマグリのお吸い物までっ…!大したものだらけだよ。)
『美味しそう…。』
ひながゴクリと喉を鳴らす。
『ありがとうよ、元就。ゆっくり味わいたいところだが、なにぶん時間が無い。
食べながら話を続けてもいいか?』
慶次の問いかけに、元就が頷く。
『お前らが嫌じゃねぇなら、俺は構わねぇよ。』
… … …
その後、食事をしながら、武器調達の取引は淡々と進んだ。
(元就さんは相変わらず何も食べないんだな。)
そう思いながら、ひなが丁度、食事を食べ終えた頃。
『よし、これでお互い納得だな。』
慶次が満足そうに微笑む。元就も口の端を上げてニヤリと笑っている。
『ああ。信長さまは なかなか太っ腹らしいぜ。』
(一体、何を、いくらで仕入れたんだか…。気にはなるけど武器の相場なんて解らないしな。)
『それじゃあ、俺達は急ぎ安土に帰るとするか。改めて受け渡しの使者を送る。』
慶次が立ち上がり、ひなも慌ててそれに習った。
『解った。つっても、顔もバレてんのに、お前ら2人だけで大丈夫か?また襲われでもしたら…。』
『元就のお陰で、多分 安芸の近くじゃ襲ってこねえさ。ま、なんとかなるだろ。』
カラカラと笑う慶次に、元就は不満げな顔で言った。
『どうせそう言うだろうと思って、心強い助っ人を呼んどいたぜ。』