第49章 海誓山盟(かいせいさんめい)
『500年先の世じゃ、どうか知らねぇが、この時代じゃ普通の事だ。
その証拠に、俺も こいつも、兄弟にゃ酷い目に合わされてる。』
『そう…なんだ。』
(言われてみれば、確かに現代でも遺産相続とかで争う兄弟とか、いるよね。)
『あー、ずっと思ってたんだけどな、あいつとか こいつとか、面倒癖えから、俺の事は慶次って呼んでくれ。
俺も元就って呼ばせてもらう。』
にっ、と笑いながら慶次が言う。
『あ?俺は別にどっちでも構わねぇけど…解った。』
少し照れ臭そうに、元就が返事をした。
『それから…。』
『まだ何かあんのかよ。』
『ああ。さっき絡んできた武士が言ってた「鷺山(さぎやま)殿」ってのが妙に引っ掛かって記憶を辿ってたんだがな…。』
(確かに言ってたな。鷺山(さぎやま)殿は生かして連れて来いと言われた、って。
あの言い方からして、私達を襲わせたのは その『鷺山殿』と呼ばれる人に間違いないんだろう。)
『で、思い出したんだが、『鷺山殿』ってのは…帰蝶の事かもしれねぇ。』
『なに?』
(えっ!?)
『帰蝶にはいくつか通り名があってな。その一つが確か「鷺山殿」だ。どうしてそう呼ばれてるのかは知らねぇがな。』
『なんでここで帰蝶の野郎が出てくんだ。』
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『だから、その前に信長を殺せ。でなければ、お前の大事な物を 1つずつ奪う。』
『大事な…物?』
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(帰蝶さん…。あの時、私の『大事な物』を奪うって言ってた。
私自身を捕まえても、脅す意味が無いんじゃ…。)
考えながら、ひなが無意識に胸の辺りに手をやる。
『どうした?苦しいのか?』
元就に言われて我に返る。
『あっ、ううん!お腹空いちゃったなーと思っただけ。』
エヘヘ、と笑い答える。
『ったくよー、お前って奴は、すっとぼけてんだか呑気なんだか解らねぇな。直ぐに食事を用意させる。
ちょっとだけ待ってろ。慶次、続きは飯の後だ。』
ぽん、とひなの頭を撫でると、元就は再び部屋を後にした。