第49章 海誓山盟(かいせいさんめい)
『ふう、やっと着いたー!』
顕如の元で、頭から茶を浴びる…という醜態を晒してから暫く、ひなは慶次と共に安芸に居た。
あの後、二度ほど顕如の寺に出向き和睦を懇願したが、にべもなく追い返されて今に至る。
そんな時、信長から「慶次と共に元就の所へ行け」と仕事を任されたのだ。
先に和睦をした元就から、近付く戦の武器を調達するため、という名目で。
(でも、元就さんは元就さんで、確か誰かと戦をしていたはずじゃ…。)
『なんだ?妙な顔して。腹でも減ったのか?』
思案顔のひなに慶次が声をかける。
『なっ!考え事してただけだよっ。まったく人を何だと…』
『お、旨そうな甘味処。』
『えっ!どこどこ?』
ブハッ、と吹き出す慶次に、からかわれたのだと悟る。
(ううっ、我ながら甘いものに目が無くて恥ずかしい。)
『悪い悪い。ま、丁度いい。少し休憩するか。』
茶屋に入り一休みする。ズズッと茶を啜りながら慶次が言った。
『さっきの顔、どうせ元就の心配でもしてたんだろ。』
『どうして解るの?』
『…お前のこと、ずっと見てきたから。』
慶次が、親指でひなの口許を拭う。みたらし団子を頬張っていたひなが目を見開いた。
『お前、ただでも甘そうなのに、こんなとこにタレ付けてたら、喰ってくれって言ってるようなもんだぞ。』
『!…あ、ありがとう。』
(誰に…かは聞かないでおこうかな。)
『元就は確か、尼子晴久っていう武将と小競り合いしてるはずだ。が、伝え聞いた情報じゃ近いうちに方がつくらしい。
それを見越して、信長さまは俺達をここに寄越したんだろうよ。』
『そうなんだ。そうだよね、信長さまが考え無しに危険な場所に部下を送らないよね。』
(そっか、元就さん達の戦、もうすぐ終わるんだ。良かった。
あの元就さんが負けるとは思わないけど、怪我してないか心配だな。)
『相変わらず他人の心配か?だが、だまには先に自分の心配した方がいいぞ。』
慶次が おもむろに立ち上がり、ひなを背に庇う。
『えっ?』