第48章 虚々実々(きょきょじつじつ)
『私、また顕如さんに会いに来るよ。それで、ダメ元で説得してみる。』
右手でガッツポーズをしながら、ひなが宣言する。その手を蘭丸の両手が包んだ。
『ありがと、ひなさま。そういう めげないとこも好きだな。やっぱりひなさまに話して良かった。』
『…っ!』
至近距離で微笑まれ、ドキリとする。
(不意打ちは止めてっ。)
『じゃ、急いで帰ろっか。』
そのまま自然に手を繋がれる。
(やばい、顔、火照ってる。こんな話してる時に不謹慎だよね。)
…安土城に戻る頃には、ひなの髪は すっかり乾いていた。
冷たい夜風のせいなのか、火照った熱のせいなのか定かではない。
*虚々実々~うそとまことを取り混ぜて、相手の腹を読み合うこと。