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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第11章 慶次


食事が終わり一息ついたころ、ドタドタと廊下を走る足音が近付いて来る。

スパーン!と襖が開いたと思ったら、派手な着物の男が立っていた。

広間に入り片膝を着くと、

『信長さま!お元気そうで!』

と挨拶を寄越す。


(テンション高いな、この人…。昨日は いなかったよね。えーと…?)


「こやつは前田慶次。傾奇者(かぶきもの)と言われている男だ。

俺の家臣だが…ふらりと行方をくらましたと思ったら、今朝方、突然に戻ってきた。」


本家・信長が耳元で囁やく。


『こら、慶次!こんな時間にやって来るとは。

いきなり行方知れずになったこと、先に信長さまに謝るようにと言ったはずだ!』

秀吉が怒るけれど、慶次は全く気にしてない様子で、えへへ、と笑っている。

『まったく、おまえは…。』

溜め息をつきながら歩きだそうとする秀吉の羽織を くいっと掴んで『まぁまぁ。』と引き留める。

『慶次さん、お腹空いて無い?こっちに座って朝餉でも食べたら?』

ひなが手招きする。

一瞬きょとんと目を丸くした慶次だが、すぐに側にやって来た。

『信長さま、俺の事は前みたいに「慶次」で お願いします。』

急に真面目な顔で言う。


(…そうか、私が怒って余所余所しい態度を取ってるって勘違いしてるんだ。

ふふっ、暫くは勘違いさせておこうかな。)


『解った。それじゃあ慶次、二度と勝手にいなくなったりしないこと。

急にいなくなると悲しむ人がたくさんいるんだからね。』

秀吉を見ながら、ひなが諭すように話す。

(流石の傾奇者も少しは反省してるよね。)

…と慶次がいた方に向き直ると、予想以上に近いところに居て思わず仰け反る。

『わぁっ!!』

『信長さまに そんなに心配して貰えるなんて万感胸に迫る思いです!』

にかっと笑いながらひなの両手を握りブンブンと上下に振る。

苦笑いしながらも、ひなは、その人懐っこい笑顔を もっと見ていたい、とも思うのだった。
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