第10章 光秀
『ぶーーーっ!』
ひなが豪快に味噌汁を噴き出した。
本家・信長が光秀の背後に立っていたからだ。
(なにをしてるんですかっ!)
ひなが心の中で叫ぶ。
「光秀の奴、この俺の気に入りに ちょっかいをかけるとは、いい度胸だ。」
そう言いながら、腰の刀に手を掛けた。
『そこまで!』
ひなは慌てて光秀の前に立ち本家・信長の手を掴んだ。
が、他の人には見えていないことを、すっかり忘れていた。
端から見れば、まるでひなが光秀に抱きついているように見える。
『なにを…。』
流石の光秀も目を見開いている。慌てて離れると、
『ご、ごめん!…っていうか子供じゃないんだから、いつまでもいがみ合わないの!』
と、二人を叱った。
『はい…。』
光秀と秀吉は顔を見合せて子供のように返事をする。
その様子を、本家・信長が「あっぱれ!あっぱれ!」と、お腹を抱えて笑っていたのを知るのは、ひなだけだった。