第46章 番外編☆忍(しのび)だって目立ってみたい
佐助『…って、だから、閉じるなーっ!』
再び佐助の大声が広間に響き渡る。
源藤斎『お前、変な薬でも飲んでいるのではあるまいな。』
源藤斎が、まじまじと佐助の顔を覗き込む。
佐助『大丈夫ですっ。失礼しました。俺の妄想は歯止めが効かないようです。』
源藤斎『ならば、他人の妄想ではなく、自分の妄想をしてみてはどうだ?
それならば、そのような奇妙な叫び声を上げる前に自ら止められるだろう。』
佐助『成る程!さすが源さん、年の功ですね。』
源藤斎『老け顔で悪かったな。お前らと大して年は変わらん。』
半蔵『まぁまぁ、源藤斎さん。佐助は「あなたの お顔持ちか落ち着いている」と言いたいんですよ。…多分。』
源藤斎『何故目を逸らーす。』
目を細めて半蔵を睨む源藤斎に、佐助が答えた。
佐助『源さん、いい提案をして頂き、ありがとうございます
。それじゃ、俺は自分の事を想像してみます。』
うんうん、と一同が頷いた。
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
ここは春日山城。その中にある佐助の部屋で。
今日は安土から、ひなが来る日だ。
謙信さまに書簡を届ける任が終わったら、この部屋に寄ると約束してくれた。
佐助『お茶と菓子の準備よーし。座布団も天日干ししたし、いい匂いの香も焚いてみた。』
(なにか足りない気がするな。なんだ?)
ひな『佐助くん、いる?』
襖の向こうから、待ちわびた人の声がする。
佐助『ああ、どうぞ。』
あえて抑揚の無い声で言う。いや、普段から あまり無いか。
ひな『お邪魔します。わ、いい香り。これって なあに?』
佐助『これは沈香と言って、香木から作られた お香だ。たまたま通りかかった店に並んでいて、面白いかと思って買ってみた。』
(本当は、前にひなさんが「お香を焚き染めた着物を着てる人って優雅でいいよね」と言ってたのを思い出して、急いで買ってきた物だが。)
ひな『そうなんだ。ふふっ。』
(なぜ今、笑ったんだ?)
佐助『あっ、すぐに茶菓子の用意を…。』
立ち上がろうとする佐助の袖をキュッと摘まんで ひなが言う。