第46章 番外編☆忍(しのび)だって目立ってみたい
裏口から、ひなが ひょっこりと顔を出す。
ひな『蔵人さん。今、休憩中?』
蔵人は頬が緩むのを隠そうともせず、ひなに駆け寄る。
蔵人『ひなさん!ああ、今、休憩に入ったところだ。』
ヒュ~ッと誰かが口笛を吹く。蔵人が一瞬 立ち止まり門徒達に声を掛けた。
蔵人『すまない、少し出てくる。直ぐに戻るが、茶を飲み終えたら先に稽古に戻っていてくれ。』
門徒集『ごゆっくり~♪』
門徒達の明るい声に見送られながら、蔵人と ひなが道場の外に出る。
蔵人『で、ひな。どうかしたのか?』
ひなの顔を覗き込みながは蔵人が尋ねた。
ひな『あっ、ううん!何でも無いの。無いんだけど…。』
ひながチラリと通りの向こうに視線をやる。先程、生け垣で声を上げていた町娘達が、こちらを伺うようにして立っていた。
蔵人『ん?あの者達がどうかしたのか?やはり私に稽古をつけて欲しいのだろうか。
女子なのに珍しい者達だな。』
ひな『違うよ!あの娘達は蔵人さんと親しくなりたくて道場に来てるの。
蔵人さんは、もうちょっと自分のカッコよさを自覚してください!』
そこまで言うと、ひながハッとしたような顔をする。
ひな『いきなり、ごめんなさい…。』
蔵人『…もしかして、妬いてくれてるのか?』
いくら疎い蔵人にも、ひなの可愛いヤキモチは伝わったようだ。
蔵人『その気持ちは嬉しいが、私にはお前だけだ。』
蔵人がひなの肩を抱き寄せ、そっと顔を近付ける。
ひな『く、蔵人さん!?みんな見てる…。』
蔵人には、か弱い抵抗も愛しい。
蔵人『そうだな。ひな、恥ずかしいから目を瞑ってくれ。』
ひな『…っ、恥ずかしいのは私の方です…。』
言いながらも、ひなは目を閉じた。
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