第46章 番外編☆忍(しのび)だって目立ってみたい
蔵人『それじゃ、次は私で。…と言っても、何をすればよいのか。』
うーん、と蔵人が腕組みをして悩む。
佐助『そうですね…。蔵人さんは立端(たっぱ)もありますし姿勢もいいですが、なにか武道をやられていたんですか?』
蔵人『ええ、武家の出なのもので剣道を少し。師範の道も考えましたが、道半ばで政宗さまに出会い心酔致しました。』
源藤斎『そのお気持ち、よく解り申す。拙者も信玄殿に出会ってから、このお方と共に歩みたいと思ったのだ。』
うん、うんと他の者達も頷く。
佐助『それでは、蔵人さんが剣術の道場を開いたと考えてみましょう。』
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
ここは安土の北にある、その名も『独眼流 世瀬道場』。
今日も、師範の蔵人に教えを乞う為、多くの門徒が集っていた。
蔵人『うん、大分良くなってきたな。君は肘をもっと体に寄せて。』
門徒1『やはり世瀬先生の教え方は解りやすい!』
門徒2『ああ。それに丁寧だし誉め上手だ。』
門徒達が口々に蔵人を称賛している。
蔵人『よし、少し休憩だ。茶にしよう。』
蔵人の掛け声で、門徒達がワラワラと外に出る。蔵人も縁側に腰掛け湯飲みに口をつける。
ふと視線を感じて生け垣に目をやると、数人の町娘が こちらを覗き込んでいた。目が合うと「きゃーっ!」と悲鳴を上げる。
蔵人『ん、なんだ?』
門徒3『先生目当てですよ。』
蔵人『私?剣術を教えて欲しいということか?』
門徒4『まったくもう、先生は疎いんだから。』
門徒達が、からかうような目で蔵人を見ている。本人は何のことだかまるで解っていない。
忍の任に着いている時は、スッポリと頭巾で覆われている蔵人の顔は…見目麗しかった。
長身で細身なのに しっかりと筋肉もある。これで町娘達が騒がぬ筈がない。
蔵人『…別に普通だろう。』
門徒1『先生の普通の基準は普通じゃありませんよ。先生は思い人まで普通以上の美しさだからな。
おっと、噂をすれば…。』