第44章 一日千秋(いちじつせんしゅう)
夕日に照らされたひなの顔が綺麗な茜色に染まる。
『確かに。俺も暫くは忙しいかもしれない。朝まで付き合う羽目になるだろうから。
今ならパワハラで訴えられそうな上司達プラス巻き添えを食った同僚と一緒にね。』
佐助は肩を竦めながらも楽しそうだ。ひなも、謙信らの顔を思い出して笑う。
『私達、本当に戻ってきたんだね。』
ひながポツリと溢した言葉に、佐助も頷く。
『うん、戻ってきた。ひなさん、今後ともよろしく。』
佐助が右手を出す。
(あ、握手…。)
『ふふっ。』
急にひなが笑い出したので、佐助は怪訝な顔をしている。
ひなも右手を出し握手をしながら言った。
『あっ、ごめん。さっき政宗と話してた時の事を思いだして、つい。「握手」を政宗に教えたのって佐助くんなんでしょ?』
あぁ、と何かを思い出すように佐助が視線を脇に向けた。
『俺達が嵐に巻き込まれる前の宴で、確かそんな話をしたかな。政宗さんの記憶に残ったなんて恐悦至極!』
『佐助くんの武将オタクも健在で何よりです。』
クスクスと二人で笑い会う。と、佐助が耳をそばだてた。
『ひなさん、そろそろドロンの時間みたいだ。よかったら今度、謙信さま達にも顔を見せに来て欲しい。
戻ってきたことを伝えたら、とても喜ぶだろうから。』
(私達が戻った事を喜んでくれる人がいるって、素直に嬉しいな。)
こくん、と頷く。心が、お日様の光を当てられたように暖かい。
「それじゃ。」と言うと、佐助が来たときのように天井裏へ消えた。ほぼ同時に障子が開く。
『ひな!宴の準備が整ったんで迎えに来た。さ、行こうぜ。』
『はい、道すがら台所の方から とても良い香りがしていましたよ。政宗さんが、今日は いつも以上に腕によりをかけると仰られていました。』
『慶次に先を超されたが、俺もひなの為に宴を開こうと思ってた。広間で信長さまがお待ちだ。家康と光秀も、もう居るぞ。』
『慶次、三成くん、秀吉さん。本当に ありがとう!』