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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第44章 一日千秋(いちじつせんしゅう)


慶次はひなの肩に乗せていた腕を下ろし、向き合って真面目に告げた。

『「なんか」じゃねぇ。お前の為だから皆、祝いたいんだ。』

(慶次…。)

『解った。ありがとう、慶次。皆さんも、ありがとう。それじゃ喜んで参加させて貰うね。

私、今から丁度 政宗に挨拶に行こうと思ってるんだ。だから伝えとく。

あ…私の為に開いて貰う宴なのに、私がお願いに行くのは おかしいね。』

あはは、とひなが笑う。つられた慶次や家臣達も皆、笑顔を浮かべていた。



道場を後にして、政宗の御殿へと急ぐ。

(たしか、ここを右…だったよね。)

ひなは以前、政宗と他愛もない話をしていた中で出てきた御殿の話を思い返す。

安土城からは そう離れていない場所に神社が二ヶ所あり、その中間辺りだと言っていた。

(あ、神社だ。)

目の前にある山の中腹辺りに1つ目の神社が見えた。

『えーっと…。』

見回すと道の先にもうひとつの神社らしきものが見えた。

(もう少しかな?)

横目に鳥居を見ながら再び歩き始める。

(ん、今なにか…。)

二、三歩 後退しながら耳を澄ます。



ポン!



と木々の合間を縫って、小気味良い音色が響く。


『ヨォーッ!』

ポン ポン ポン…


(これって歌舞伎なんかで演奏される…確か鼓(つづみ)?)

その音色に誘われるまま境内への階段を登る。


ポン!

『ハッ!』

(この声って…。)

階段を登り終え鳥居をくぐると、神楽殿(かぐらでん)に人影があった。

『政宗…。』


ポン…


音色が、ひとつ境内に吸い込まれ、一瞬 静けさが漂う。

『ひな!?』

サザッと音がしたかと思うと目の前に政宗の顔があった。

『お前、今まで一体どこにいやがった!』

眉を吊り上げ、政宗がひなを叱りつけた。

(うぅっ、怖い!今日は怒られてばっかりだよ。)

『ごめん…なさい。あと、色々 押し付けちゃったことも謝る。』

(あとのことは政宗に聞いてくれ、って丸投げしちゃったんだよね。)

『はぁ。』

政宗は、下を向いて大きな溜め息をついて、片手でひなの頭を自分の胸に抱いた。

(!!…政宗の鼓動、凄く速い?気のせいかな。)

『俺は戦も、早馬も、大が付く程、好きだ。怖いなんて思ったことは無い。』
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