第43章 天佑神助(てんゆうしんじょ)
[このページから暫く佐助目線で進みます。]
(ん?ここは何処だ。見覚えが…。)
『三雲くん?』
声のした方を振り向くと、榊教授が目を丸くして こちらを見詰めていた。
『2ヶ月も連絡無しに何処に行ってたんだい?』
『榊教授…。』
(ああ、大学の研究室か。)
『ええ、ちょっと色々ありまして。ご心配をお掛けして申し訳ありません。』
佐助が深く頭を下げる。
『いやいや、私は構わないが。他の学生達が君の意見が聞けないと嘆いていたよ。』
教授が微笑む。佐助は本業の呉服店仕事の傍ら、臨時の大学講師をしていた。
卒業して、家を継ぐために働きだしてからも研究への熱が覚めることはなく、助手を捜していた榊教授が誘ってくれたのだ。
『教授、実は…。』
… … …
『なるほど、それは驚きだな…。』
顎を擦りながら、教授が感嘆の声を上げる。
『はい、人生最大の驚きです。信じて頂けないかもしれませんが。』
佐助が目を伏せる。
『いや、非常に興味深い!』
『え?』
『君はまさしく時間旅行をしたわけだ。その…ひなさん?という女性と共に。』
『信じて下さるんですか?』
『信じるもなにも、タイムトラベル理論は君が日夜 研究していたものじゃないか。それを体現した君が目の前に居るんだからね。』
『榊教授…。ありがとうございます。』
(今の説明じゃ「夢でも見てたんだろ。」って他の人間は信じませんよ。ああ、こんな人だから、俺はあなたの元で学びたいと思ったんだ。)
佐助が感無量の思いに浸る。
『ところで、もう あちらの時代へは戻らないのかい?』
教授に訪ねられ、どう答えていいものかと佐助が悩む。
『それは、戻りたいですが。彼女が何処にいるのかさえ解りません。』
『ふむ。ところで、ひなさんは髪が長くて綺麗な目をした小柄な可愛らしい女性かい?』
『は?』
(榊教授?急に何を言い出すんだ。)
『あんな感じの。』
教授が研究室のドアに視線を送る。
『あんな?』
佐助も振り返りドアに目をやる。