第43章 天佑神助(てんゆうしんじょ)
『スーパーセルが発生したみたいだ。ここに居たら危ない。何処か建物の中へ…。』
立ち止まり、辺りを見渡す佐助の手を、今度はひなが引く。
『ここで隠れて、もし嵐を免れたとしても、それじゃ何の解決にもならないよ。私はこのまま進む。』
『ひなさん…。ごめん、弱気になってた。そうだね、行こう。』
その時だった。二人の体が暴風に煽られて浮き上がる。
(えっ…!?)
気付けば、あっという間に近付いていたスーパーセルの渦に飲み込まれていた。
『佐助く…。』
(苦しい…息、出来ない!)
『…くっ!』
佐助は、ひなの体を覆うように しっかりと抱き締めている。
「「大丈夫よ。」」
何処からか声がする。
「「大丈夫だ、抵抗せず風に身を任せて。」」
(誰なの?)
「「それしか言えないの。お願い、信じて!」」
『…ひなさん!一か八かだ。』
こくん、と頷くと、二人は強張っている体の力を抜いた。
どれくらい経った頃だろう、体を包む温もりが消えた気がして目を開ける。
(あれ、佐助くんがいない!)
気付けば、ひなの体を抱き締めていた佐助の姿がない。
(ここ…私の実家!?あっ、お父さん、お母さん…。)
『ひな?どうしたの、連絡もしないで急に。何かあった?』
『お母さん、私…。私ね、ある場所で、やりたいことが出来たの。この先の人生を、そこに居る大切な人達と歩いていきたい。』
『藪から棒に、なに?』
『たから…暫く会えなくなると思う。』
『ええっ?バカな事言わないで。それに今の仕事はどうするの?』
グッと下唇を噛む。
『母さん、いいじゃないか。ひなが こんなに何かをやりたいって言ったの、俺は初めて聞いたよ。
お前の会社には、父さんから適当に言っておくから。』
そう言いながら、ひなにウィンクする。
(お父さん…。)
『な、信じて送り出してあげよう。』
『でも…。』
『ごめんなさい。落ち着いたら、必ず…必ず また帰って来るから!』
(本当は、また現代に戻れるかなんて定かじゃないけど。)
『…解った。それじゃ今度 帰ってくる時は、その大切な人達も連れて来ること。…いってらっしゃい。』
『うん!行ってきます。』