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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第43章 天佑神助(てんゆうしんじょ)


『そんなこと気にしないで欲しい。逆に、こんな状況なのに二人で居られて喜んでいる俺が居る…って言ったら、どうする?』


『え?なに?風が強くて良く聞こえなかったよ。ごめん、もう一回言って。』

と、ひなが頼む。


『…いや、気にしないでって言っただけだよ。』

『そうなの?ありがとう。』

心なしか佐助の横顔が寂しげだった。


ゴォォォッ!


『きゃっ!』

ひなの手にしていた提灯の炎が、強い風で吹き消された。


『やっぱり この風の中じゃ提灯は意味ないか。

…フッ!』

佐助が自分の持つ提灯の灯りを吹き消した。

『わっ、真っ暗!って、なんで自分で消してるの!?』

(これじゃ、すぐそこにいる佐助くんの姿もイマイチ解んないよ。)

そう思っていると、ぎゅっと手を繋がれた。

『ひなさん、真っ暗で怖いだろうけど俺を信じて。忍者の修行で「夜目」も鍛えてるんだ。』

『夜目って…わっ!』

体ごと佐助に引き寄せられる。

『暗くても ある程度見える。俺の腕に掴まってて。』

『わかった。』

佐助に言われるがまま、ひなは、ぎゅっと腕を絡める。


『これは…破壊力が凄いな。顔が見えて無いのが救いだ。』

『破壊力?』

『…なんでもない。先を急ごう。』




一歩、また一歩と進むたび風は強くなり、雨粒も加わって行く手を阻む。

それを ものともしない佐助の足取りだけが救いだ。

(いったい今どの辺りなんだろう。どれくらい歩いてるのかも解らないや。)

目の端に、うっすらとだが朱い色が見える。

『ひなさん、伏見稲荷だ。丁度 中間辺りだな。』

佐助の言葉に空を見上げる。

『痛っ!』

おでこに固いものが当たったと思ったら、バラバラと雹が降りだした。


『まずいな、そろそろか。』

本能寺がある方角の上空には、大きく渦を巻く黒い不気味な雲が現れていた。


ピカッ!

ドドーン!!!


『きゃあっ!』

すぐ近くに雷が落ち、佐助の腕を掴む手に力がこもる。
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