第43章 天佑神助(てんゆうしんじょ)
『ん…。』
バタバタと廊下を走る足音に、まだ眠い目を擦りながら ひなが目を覚ます。
時間のせいなのか天候のせいなのか、まだ外は暗い。
何事かと確認する為に取り急ぎ着替える。足音が向かったのは、昨日 宴会を開いた大広間の方向だ。
ひなも大広間へ向かう。
『おう、ひなか。早いな、まだ明六ツまで一刻はあるぞ。』
昨日は ずっと料理を作るのにかかりきりで会えなかった政宗に驚かれる。
(ええと、一刻は2時間位だから、今は明け方の4時くらいか。)
『おはよう、政宗。騒がしいから何事かと思って目が覚めちゃって。ねぇ、何かあったの?』
尋ねると政宗も首を捻っている。
『いや、俺もさっき来たとこでな。雲が…どうとか騒いでたような。』
『雲!?それって…。』
ひなは あたふたしながら佐助の姿を捜す。
『おい、どうした。大丈夫か?』
『うん、大丈夫。ねぇ政宗、本能寺は どっちの方角?』
『本能寺?それなら、あっちだな。』
ひなは政宗が指差す方の外廊下に出ると、中庭に通じる雨どいを開けた。
建物の隙間から、まだ暗い空をうかがう。視線の先では、あちらこちらから集まって来た黒雲が巨大な固まりになりつつあった。
唖然として見詰めていると、
『ひなさん!』
と呼ぶ声が聞こえた。
『佐助くん!』
まさに今、捜していた人の姿が見えホッとしたのも束の間。
『スーパーセルの出現する時間が、更に早まってるみたいだ。君はこの時代に必要な人間だと認識されたはずなのに…。』
佐助も動揺が隠せない様子だ。
『口約束だけじゃダメだったのかな。』
『解らない。でも何か別の方法を探さないと。』
後ろで政宗が腕を組み、渋い顔で二人を見ている。
『さっきからなんなんだ?その、すうぱ…なんとかってのは。』