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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第42章 危急存亡(ききゅうそんぼう)


『信長さま、明日は早めの出立がよろしいかと。』

障子を閉めると信長に向き直り、光秀が言う。

『そうだな。よし、この辺りでお開きだ。各々、部屋に戻り ゆっくり休め。明日は明六ツには経つ。』

『『『はっ!』』』』


ザワザワと家臣たちが席を立ち、女中が片付けを始める。


ひなは広間を出ていく信玄らに声をかけた。

『あのっ…。』

『ん?どうした、ひな』

信玄が振り向いて立ち止まる。

『あの、皆さんは明日の朝、自分のお城に帰るんですよね?』

『あぁ。そうだ、君と…いや、信長と交わした和睦は解消しないから安心していい。』

大きな掌で、ひなの頭をポンポン、と撫でる。

『正直、俺は信長の事を許す気は無いし、この先も仲良くするのはごめんだ。だが、ひなが悲しい顔をするのは もっとごめんだからな。』

『信玄さま…。』

(信玄さまにも辛い決断をさせちゃてるな。)

『ははっ。そんな顔してると拐っていくぞ、俺の天女。』

信玄はひなの体を引き寄せ、僅かだけ腕に閉じ込めると「またな。」と去っていった。

『マジで遊びに来いよな。俺の飼ってる山犬にも合わせてやるからさ。』

『山犬?…って、狼!?』

(幸村って狼、飼ってるんだ。)

『息災でな。あまり飲み過ぎるなよ。』

『そっくりそのまま謙信さまに お返しします。』

ふふっ、と笑い合う。

『お前の住んでいた時代の事、まだまだ聞きたい。俺も…待っている。』

『兼続さんに喜んで貰えるような話、まとめておきます。』

ひながペコッと頭を下げる。

『あ、そういえば佐助くんは…。』

『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。』

『きゃっ!』

急に耳元で声がして飛び上がる。


『ひなさん、毎度 驚かせてゴメン。』

振り替えると、佐助と義元が立っていた。

『なかなか慣れないもんだね…。もう酔いは覚めたの?』

(顔の赤みは引いたみたい。)

『佐助ってば、さっき ひなさんと離れた途端、正気に戻ってたよ。いったい何に酔ってたんだろうねぇ。あれれ…。』

含み笑いを浮かべる義元の体を、佐助がクルリと舞われ右させる。

(えぇっ…。)
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