第42章 危急存亡(ききゅうそんぼう)
『過去の歴史を変えるのは、本来ならば決してやってはいけない倫理に反する行為だ。
俺達の場合、この時代にいることが既に そうだと言える。』
うっ、とひなが言葉に詰まる。
(確かに…五百年も先の時代からやってきて、織田信長に成り代わっちゃったり、捕まったり、歴史に名を残す武将達に世話を焼いてもらったり…。)
『あれ?おかしいな。…私ばっかり色々やらかしてない?』
『…コメントは差し控えさせて頂きます。』
(真顔で返された!)
『でもそれは、長い歴史に於いて、そう気にする程の事じゃ無かったんだろうね。
計算が狂いだしたのは、ごく最近の事だよ。ひなさん、何か変わったことはない?』
(変わったことばっかりだったから、もはや何が変わったことなのか解らない!)
ひなが眉間に皺を寄せて考える。
『あ…。』
思い当たることは、これぐらいか。
『この時代に残りたいって気持ちが…強くなったから?』
納得するように佐助も目を伏せた。
『君もか。実は俺もなんだ。この時代にやって来て、戸惑うこともあったけど、一生ものの友達や手はかかるけど尊敬できる人に出会った。
この先、そんな人には出会えないかもしれない。
そう思ったら、現代に戻りたいという気持ちが薄れていた。
だけど歴史は…それを許さないらしい。普通なら起こらない程のスピードと確率でスーパーセルが発生する。
俺の計算では、本能寺を中心にして半径50km規模の中型の物が発生する予測なんだ。
もちろん、ここ伏見城も その範囲内。』
『そんな…。』
(でも50kmなら歩けない距離じゃない。)
『じゃあ今から城を立てば…。』
佐助が首を横に振る。