第41章 掌中之珠(しょうちゅうのたま)
『…いや、どういうことですか?』
ひなが「はて?」という顔で元就を見る。
『はー。ここまでニブチンだと、さすがに織田軍の野郎共に同情するぜ。』
元就が深い溜め息をつく。
『まったく、なんでこう疎いかねぇ。』
そう言いながらひなの鼻を摘まんだ。
『ふぁっ!なにするんですかっ!』
クックッと面白そうに笑う元就を見ていたひなだったが、つられて笑顔になる。
『ふふっ!元就さんって意外と優しい顔で笑うんですね。』
『意外は余計だ。』
また鼻を摘ままれそうになるのを、するりと交わすとひなが言った。
『元就さん、安土城に戻ったら、急いで正式な和睦の書面を交わしましょう。元就さんが、ずっと笑顔でいられるように。』
それじゃ、と言うと、ひなが織田軍の武将達の所へ戻る。
『…杉大方(すぎのおおかた)様に似てると思ったのは、優しさだけじゃなくて根っこの強さのせい、だったのかもな。』
そう呟く元就は、また巾着卵に手を伸ばしていた。
『ふっ…本気で旨いな。』