第41章 掌中之珠(しょうちゅうのたま)
『『『本能寺!』』』
この時代に飛ばされて、ひなが最初に居た場所だ。いきなり大火事で焼け出されたのだから、印象深い場所に違い無い。
安土城には早馬が飛ばされた。
一行は本能寺へ急ぐ。ここからは そう遠くないはずだ。
本能寺があった場所は、まだ再建途中の為 建物の形は無い。
そこへ、二条城にいた秀吉達が先に、少し遅れて大阪から信玄達も到着した。
~~~ ~~~ ~~~
(痛たた…。)
体の あちこちが痛み、ひなが目を開ける。…開けているのに真っ暗だ。うつ伏せて倒れているせいか?
『あ、れ…?夜?』
夜の暗さとも違う気がして体を起こした。
『ここ、何処…だろう。』
右を見ても左を見ても何もない。誰にともなく声をかける。
『誰かいますかー?』
無論、返事はなく ただ自分の声だけが乱反射している。
(えっと…私、何してたんだっけ?…あぁ、そうそう、長期の休みを取って京都を一人旅してたっけ。
可愛い着物をレンタルして…街中を散策して…)
『散策して…?』
(あれ、思い出せない。あ、もしかして、これってまだ夢の中なのかな?
ってことは、いつか覚めるよね…。)
ふっ、と笑うとひなが目を瞑る。
〔駄目だ〕
(ん?今、何か聞こえたような。気のせいかな。)
〔意識を手放してはならん〕
(気のせい…じゃない?)
〔戻って来れなくなるぞ、ひな!〕
(誰?)
〔思い出せ。貴様は俺の…俺達の宝なのだ〕
(思い出せ?何を!?)
〔さっさと起きて、まだまだ俺に甘やかされろよ。〕
〔戻ったら上手い料理、山程作ってやるぞ。何 食いたい?〕
〔ひなさまが好きそうな本を仕入れましたよ。〕
〔もう、いきなり いなくなったりしないからよ。〕
〔天女は寝顔も美しいが、早く笑顔を見せてくれ。〕
〔肝が座っているのは解ったが、眠ってばかりだと つまらんな。〕
〔寝た振りとかいいから、さっさと目ぇ開けろってーの。〕
〔和睦、すんだろ?寝たままじゃ書状も交わせねえ。〕
〔ひなさん、君が笑ってくれないと俺は…どうにも寂しいらしい。〕