第40章 最寒松柏~足利義昭 京都編
『敵襲ーーー!』
その時、叫び声と共に、バンッ!と広間の障子が開き、織田軍の武将達が雪崩れ込んできた。
『信長さまっ!』
秀吉が辺りを見回しながら叫ぶ。本家・信長の姿を その眼に捕らえパチパチと瞬きを繰り返した。
『えっ?ひな…じゃない…信長…さま?』
その様子に政宗も気付き足を止めた。
『ん?どうした、秀吉。ひなは無事か?…なにっ!?』
同じく驚きに目を見開く。
二人に向かい本家・信長が言う。
『話すと長い。先にこいつらを片付けるぞ。』
『…御意。』
激しい乱闘の最中、義昭が自軍に守られながらジリジリと後退する。途中、高座に飾っている刀を掴むと本家・信長に斬りかかった。
『ふざけるなぁーーーっ!』
勢い良く振り下ろされる刀をひらりと交わし、本家・信長は義昭の手首に手刀を当て、はたき落とした。
『ぎゃっ!』
義昭が情けない声をあげて、その場に座り込むと光秀がすかさず縛り上げる。
『なっ、何をしている!?気でも狂ったか!!』
両の眼を血走らせる義昭を冷ややかに見下ろし、光秀は飄々と答える。
『気など狂っておりませぬ。』
ゆっくりと本家・信長に視線を寄超す。
『たとえ言葉は交わさずとも繋がっているのが主従というもの。私の主は今も昔も信長さま、ただ一人だ。よく覚えておくがいい。』
『なにっ!?くそう、最初から示し合わせておったか!!』
義昭が怒りに肩を震わせる。
『いや、こやつとは暫くまともに話もしておらん。』
言い捨てる本家・信長の背中を、義昭が あんぐりと口を開けて見送っていた。
『信長さま!』
義昭の手下を討ち取り、織田軍の武将達が本家・信長の元に集まる。
『あらかた片付いたな。』
『一体 何がどうなっているのですか!?』
訳が解らないという顔で秀吉が詰め寄る。
『今から話すこと、信じるか信じないかは貴様ら次第だ。ただ、信じなければ貴様らにとって大切な女子の命が消えるのだけは確かだな。』