第39章 再寒松柏~帰蝶 商館編
佐助が商館の壁を蹴り登り開いている窓から部屋に飛び込む。
『あぁ、信長さま、お帰りなさい。』
『相変わらず おかしな忍だな。やはり側に置きたいものだ。』
『お褒めいただいて光栄です。ってそうじゃなくて、信長さまが みんなに見えていると言うことは…。』
苦い顔で佐助が問いかける。
『ああ。ここにいないことからしても、今度は あやつが俺の見た暗闇にいるかもしれん。それも定かでは無いがな。』
信長が答える。
『早く探さないと…ひなさんの魂が何処かに消えてしまう前に!』
我を忘れて佐助が悲痛な声をあげた。
『おいおいおい…一体 何がどうなってんだ?さっきまでいた…女信長は何だったんだよ。』
黙って二人の やり取りを聞いていた元就が尋ねる。
『ですから、信長さまの代わりに何処かに飛ばされて…っ!』
佐助の両肩を、元就がガシッと掴んだ。
『忍眼鏡、いいから落ち着け。で、順追って話せ。』
商館の外にいた武将達も、何事かと部屋に集まって来た。
『すみません、元就さん。もう大丈夫です。』
眼の焦点を合わせ冷静になった佐助が、ずれた眼鏡を整えながら元就に微笑む。
そして、自分とひなが500年後の未来から来たこと、この時代の信長と入れ替わってしまっていたことなど、なるべく簡潔に解りやすく説明した。
『…と、言う訳なんです。』
最初は信じられない様子の武将達だったが、普段 冗談を言うことの無い佐助や信長が言うのだから信じざるを得ない。
『なるほどな。ならば、ひなは今 何処にいるのか…。』
謙信の視線が彷徨う。他の者も戸惑いを隠せずにいた。
『…俺は暗闇を行く宛も無く歩き、安土城に辿り着いた。もしかすると、その者の想いが深く残る場所や印象深い場所に行き着くのかもしれん。』
信長がポツリと吐いた言葉で、佐助の脳裏に ある場所が思い浮かんだ。
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