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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第39章 再寒松柏~帰蝶 商館編


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同じ時、帰蝶の商館内にて。




(ええと…。これは どういう状況なんだろう。)

ひなの頭の上で疑問符が踊る。

品のいい西洋風の応接セットが置かれた部屋。

革のソファーに座る自分と、目の前のローテーブルに置かれた紅茶にケーキ。

(花火大会の会場で襲われて、光秀さんに抱えて連れ去られた所までは覚えてるんだけど…)

ひなは、何か薬を嗅がされ眠ってしまい、目が覚めたら この状態だったのだ。

折れるほどに首を傾げていると、部屋の扉がカチャリと開いた。

驚いて音のした方を振り向くと、そこには帰蝶が立っていた。

『そう驚かなくても俺は何もしない。』

ゆっくりと、テーブルを挟んだ向かいのソファーに腰かける。

(あ、右手…。)

少し血の滲んだ包帯が痛々しい。

『怪我…大丈夫ですか?』

帰蝶が僅かに片眉を上げる。

『呑気なものだな。自分が置かれている状況が解っていらっしゃらないのか?』

(今一つ…と素直に答えようとして、慌てて目を瞑る。)

『あなたの商館…ですよね?』

こくり、と帰蝶が頷く。

『あの…光秀さんは?』

『あいつは今、俺達の雇い主様の所へ報告にでも行っているのだろう。』

不快そうに、そう答える。

『それは、もしかして足利義昭様の事ですか?』

『さすが信長さま、ストレートな質問で。ま、遅かれ早かれ解る事だしな。

仰る通り、足利義昭様こそ件(くだん)の首謀者だ。

俺達は義昭様より、貴方を捕らえるようにと命令されている。』

(やっぱり!)

『捕らえて どうするつもりですか?こ…殺すんですか?』

ゴクリと唾を飲み込んで、ひなが尋ねる。

『さあな、それは俺の知ったことではない。ただ、すぐに殺しはしないだろう。

義昭様は貴方の力も心得ている。出来れば手の内に囲いたいはず。表向きはWin-Winの関係を築こうとするだろう。

貴方が…逆らわなければだがな。』

ソファーに深く腰かけたまま抑揚無く語る。

(「すぐには殺さない」って…いつかは殺すってことなんじゃ…。)

そう考えた所で別の疑問符が加わった。
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