第6章 敵対する者達
~~~燃え盛る本能寺の裏山にて~~~
それより熱い炎を瞳に宿した人影があった。
『…信長は生き延びたようですね。』
まだ少年の面影を残す男が口を開く。
『あぁ、そのようだな、幸村。』
大柄な男は、苦々しい顔で本能寺を見つめている。
『信玄は手ぬるいな。一足遅かったか。俺の姫鶴一文字が腹を空かしている。』
つり目の男は刀の柄に手を掛け、今にも誰かに斬りかかりそうだ。
『謙信さま、ここで暴れないでください。信長側の人間に見つかると面倒です。』
忍者姿の佐助が、飄々とした顔で制す。
『信長は…あぁ、秀吉と政宗に助けられたのか。それにしても、また美しいものが無駄に失われてしまったね。』
『義元さん、扇子であおいでも火は消えません。風を送ると逆に広がります。』
はぁ、と軽い溜め息をつきつつ、佐助は懐から取り出した小型の望遠鏡で信長の姿を追う。
『…ん?』
あの着物の模様 見たことが…。
(まさか…)
~~~ ~~~ ~~~
『あのー、どうでしょう?似合ってますか?』
『えぇ、とても…。その着物の柄は「桜文(さくらもん)」と言って縁起の良い物事の始まりを意味するそうです。
今日はなにか良いことが起きるもしれませんよ。』
~~~ ~~~ ~~~
(彼女だ。
やっぱり俺と同じように、この時代に飛ばされていたんだな。よりによって…。)
『本能寺が燃えている、中に信長がいるらしいと聞いたときは、寺と共に燃えてくれるなら それもまたよしと思っていた。
相変わらず悪運の強い奴だ。』
信玄は眉根を寄せると吐き捨てるように呟き、皆はその場を後にした。