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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第37章 百花繚乱(ひゃっかりょうらん)


ほんの数秒が永遠に感じる。

こめかみから一筋の汗が流れた時。


ズガーン!


ひとつ衝撃音が響き、帰蝶の持つ銃を弾き飛ばした。

『くっ!』

帰蝶が右手を押さえて顔を歪める。弾が掠めたのか、押さえた掌から赤いものが流れていた。


『誰だっ!』


帰蝶が左右を窺うのと、ひなの体が後に引っ張られるのは同時だった。

『きゃっ…!!』

『…待てっ!!』


ドボーーーン!


血のついた掌はひなが伸ばした手を捕まえることは出来なかった。

『くっ…、これまでか。また嫌みを聞く羽目になりそうだな。』

帰蝶は苦虫を噛み潰したような顔で器用に片手で櫂を操ると、小舟ごとその場を離れた。



ゴボゴボゴボ…。


ひなの体が、暗い湖の底へ沈んでゆく。

(嘘…私、溺れて…る?)

目を開けても、見えるのは揺れる水面(みなも)だけだ。

もう駄目だと思った瞬間、ザバッと体が水面に浮かんだ。

顎を支え、片手を胸元に巻き付けるようにして、誰かがひなを引っ張って泳いでいる。

暫くして岸にたどり着き、ひなは水中から引き上げられた。

『カハッ!!ゴホゴホッ!』

『大丈夫か?ひな!』

そこでやっと、助けてくれたのが幸村だと気付く。荒い息を落ち着けてひなが尋ねる。

『ゆ、幸村、どうしてここに?』

『お前の文が届いて、信玄さま達と早めに安土入りしてたんだ。

で、たまたま湖の畔(ほとり)を歩いてたら、対岸に真っ青な顔した秀吉がいて…。

その視線の先を辿ったら、お前が誰かに銃 向けられてたってわけだ。』

(そ、そうだったんだ…。)

『幸村が通りかかってくれて助かったよ。ありがとう。』

お礼を告げると、幸村は少し照れたように『おー。』と言った。

(あれ…?それじゃ、あの銃声は いったい…。)

『信長さまっ!!』
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