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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第37章 百花繚乱(ひゃっかりょうらん)


真っ直ぐに秀吉の瞳を見つめた。

『信長殿…お可哀想に。まだ、記憶が混乱されるのですね。』

秀吉が辛そうに眉間に皺を寄せる。


ひなは、穏やかに続けた。

『声音や姿は真似できても、細かな所は なかなか真似できないものですね。

秀吉さんは私のことを『信長殿』なんて呼びません。

それに良く見たら、あなたは秀吉さんより少し背が低くて線が細い。

私には、もう全くの別人にしか見えないんです。』

寸刻の沈黙のあと、静寂を破って溜め息が聞こえた。


『はっ。完璧だと思ったんだがな。』


秀吉に化けていた男が、バリバリと覆面を剥ぎ取った。

覆面の下には女性かと見まごう程の美しい顔があった。

『あなた…は?』

『俺の名は帰蝶。元は織田軍の武将でしたが…。本当に覚えていらっしゃらないので?』

(帰蝶!?いきなり織田軍を裏切って出て行った人だ!

っていうか、知らない事がバレちゃった…どうしよう。)

青くなるひなとは対照的に、当たり前のように帰蝶は言う。

『まぁ、秀吉の事も解らなかったらしいし、仕方ないことか。』

(近くにいたわけでもないのに、なんでそんなこと知ってるの?)

『何故そんなこと知っているのか、という顔ですね。

何処にでも斥候は潜んでいるものです。お気をつけて。』

(気を付けても、きっと私には解らないだろうけど…。)


『無駄話はここまでにして本題に入りましょう。単刀直入に申します。

俺は あなたのお命を頂きに参りました。』

帰蝶は当たり前のように懐から銃を抜く。その銃口は迷いなくひなに向けられた。

ひなの心臓が、まるで「自分はここだ」と存在を証明するように連打している。

少しでも動けば、帰蝶は躊躇せず引き金を引くだろう。
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