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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第37章 百花繚乱(ひゃっかりょうらん)


安土城下の西の湖(にしのこ)・湖畔で行われる、大花火大会 当日の夕暮れどき。

そこら一帯には出店が立ち並び、大勢の人で賑わっている。

『うわ~、すごい人手だね!』

その中を、ひなは花火の打ち上げ場所に向かう家康と肩を並べて歩いていた。

『まったく…。あんまりデカい声 出して騒がないでください。みんなにバレると厄介ですから。』

表向きは花火大会という名目だが、この騒ぎに乗じて攻めてくる敵を捕らえようという作戦でもある。

つまり、ひなは撒き餌(まきえ)のようなものだ。


『少しは目立たなきゃ、敵が気付かないでしょ?』

『敵をなんだと思ってるんですか。信長さまの顔を知らない奴はいませんから。気付かないわけないでしょ。』

そっか、と頭を掻きながらひなが眉を寄せる。

『お祭りなんて久し振りだから、本音を言えば もうちょっとこの雰囲気を堪能していたかったんだけど。』

祭りの喧騒を ぼんやりと見つめる。

その視界に派手な法被(はっぴ)姿が見えた。

『あ、慶次!』

その姿にひなが声をかける。

気付いて振り向いた慶次が、『あぁ、信…。』と言い掛けて

『ひな様!』

と呼び直す。

『ふふっ、気を遣ってくれて ありがとう。』

思わず微笑むと、家康の冷めた呟きが聞こえた。

『…ぎりぎりでしたけどね。』


『この辺りの様子はどう?』

さりげなく ひなが尋ねる。

『今のところ特に変わりはないようです。ちらほらと気になる輩はいますが…。』

『そう、わかった。この後も よろしく頼むね。何かあったら、すぐ知らせて。』

こくりと頷く慶次を残して、ひな達は更に歩いていく。



暫くして、花火の打ち上げ場所に着いた。

整然と打ち上げ台が並ぶ様子に圧倒される。


『おう、信長さまに、家康!』

『政宗さん!凄いですね、これ。』
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