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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第36章 狂乱怒涛(きょうらんどとう)


【信長の怪我の回復が思わしくない。】という噂は、一週間と経たぬ間に日ノ本に広まった。


『光秀さん、いったいどんな手を使って噂を広めたんだか…。』


思った通りというか、思った以上というか、最近は安土の城下に よからぬ輩か大勢やって来ているらしい。

その対応に秀吉は大わらわだ。

『小者は捨て置け。いちいち相手にしておられん!』

今日も朝から忙しそうだ。

そんな皆の姿を横目に、ひなが何度目かの溜め息をついた時。


『信長さま、今よろしいでしょうか?』

声のする方を見ると、光秀が障子の向こうで膝ま付いていた。

『どうぞ。』

とだけ言うと、ひなは座り直す。

『大物が掛かりました。』

『大物?』

『はい。一向宗が動き出しました。』

一向宗というと顕如達のことか。

『顕如が動くと言うことは…。』

『はい。元就も同調するのは間違いないでしょう。』

元就…。ひなは、炎の中で揺れる銀髪を思い出す。


『解りました。ところで光秀さん。葉月には河川敷で大きな花火大会を行う予定だと言ってましたよね?』

ひなが そう言うと、怪訝そうな顔で光秀が答える。

『はぁ、そうですが。』

何を突拍子もないことを、と言いたげな顔だ。

『あれ、文月…今月に早められませんか?』

光秀にしては珍しく、ますます表情が険しくなる。

『それは出来ますが…。しかし戦が始まろうという時に何故?』

ひなは口の端を上げて微笑むと、

『戦の前に打ち上げ花火で気合いを入れるのも、いいでしょ?ついでに、このことも流布して下さい。』

と続ける。

(なんだか私、本家・信長さまに似てきたなぁ。)

そして光秀に2通の書状を手渡した。


『それじゃ、急いで この手紙を信玄さまと謙信さまに。』

光秀は手紙を受けとると一度頭上に掲げ、後に控えていた久兵衛に預ける。

久兵衛は手紙を大事に懐にしまい、その場を後にした。
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