第35章 軍事同盟
…先程 考えた作戦を、広間にいた武将達に伝える。
『なるほど。うつけの信長に似合いの作戦だな。』
信玄が納得する。
私じゃない!と否定したいが、ひなの左腕は、御大層に巻かれた包帯の上に派手な手拭いまで結ばれている。
うつけ以外の何者でもない。
『…そうですね。』
ひきつりながら相槌を打つ。
『それでは、我等はいったん居城へ戻り軍備を整えるぞ。』
謙信が立ち上がり腰に刀を差した。
それに付き従うように兼続も立ち上がる。
『はい、出陣のご連絡は改めて致します。』
三成が頭を下げる。
少しして信玄らも その場を去った。
振り向き様に義元がひなにウィンクをしたことには、ひな以外の誰も気付いていないようだった。
ひなは赤くなる頬を気付かれないよう、さりげなく横を向いて隠す。
(あ、そうだ、蘭丸くんの件…。)
ひなは家康に耳打ちする。
『家康、お願いがあるんだけど。』
『なんですか?』
冷めた口調で家康が返事をする。
『ちょっと蘭丸くんの様子を見てきて欲しいんだ。』
そう言うと、探るような眼差しで ひなを見る。
『蘭丸なら、終始 誰かが見張ってるはずですが?』
『確かにそうなんだけど…。』
あの匂いが やはり気になる。しかし、それを言うと なにかとマズい。
『ずっと誰かに見張られてるのって辛いからさ。精神的にまいってないか心配で。』
と言葉を濁す。
『信長さまは敵にもお優しいんでしたね。解りました。様子を見てきます。』
『ありがとう家康。』
間近で微笑むと、家康は そっぽを向いたまま、
『この程度の事で ありがだかってもらえるんなら、いつでも聞きます。』
と答え、足早に広間の外へ消えた。
(えっと…もっと頼っていいよ、って事かな?うん、そういうことにしとこう。)