第34章 束の間の休息(本家・信長と)
佐助くんが言っていた「スーパーセル」が発生するまで、あと1ヶ月。
発生したとしても、元の時代に無事 戻れるとは限らない。
おまけに今は、上杉・武田軍や顕如軍と一触即発の厳しい状況下にある。
戻れなかった事を想定して、何も出来ないふりをした方がいいだろうか。
「貴様、また阿呆な事を考えているな?」
『うっ…だって!』
本家・信長は口の端をあげ、余裕の笑みを見せている。
「案ずるな。俺は天下統一を成す男だ。必ずや貴様を元の時代とやらに返し、貴様の未来を守ってやる。
そして、皆の心に俺が本家・信長だと思い知らせてやる。」
俺様発言が今は凄く心強い。
『…あれ、今、本家・信長って…。』
「貴様が腹の中で そう呼んでいただろう。」
(そうだった、心の中で呼んだら聞こえちゃうんだった…。うん、バレてるものは仕方ない。)
ひなは開き直ることにした。
『解りました。本家・信長さま。それじゃ、私は今まで通り信長を演じます。』
心を決めて伝えると、「声を出して呼ぶときに本家・信長さまは おかしいだろう。」と諭された。
「数日後に武田・上杉軍との和睦会合があるのだな?」
『はい。まずは武田・上杉軍と一緒に、顕如や毛利元就を倒すのが先決だろうということになって。』
この間の戦でよくよく解った。
今もっとも危険なのは、毛利元就と、未だ表舞台には出て来ない顕如の方だ。
「謙信は なんとかなるとして、信玄は一筋縄ではいかぬかもしれんな。」
『え?どうして謙信さまは、なんとかなるんですか?』
(性格的には、信玄さまの方がやさしそうだけど。)
「謙信は根っからの戦狂い。我らと戦えないとなれば、他の相手を欲するはず。
その相手が安芸の豪傑、毛利元就となれば、大喜びで和睦して叩き潰しに行くだろう。」
(なるほど、確かに。)
和睦でも何でもいいから、早く戦いに行かせろ!と叫ぶ姿が目に浮かぶようだ。