第3章 佐助
『うん。この世界では信長は女性ということになってる。』
『えっ!?』
だから皆が違和感無く接していたのだと知る。
『君のことを、ずっと探してた。
…まさか、君が女・信長になってるとは思わなかった。』
『うん、私が一番驚いてるよ。
そうだ。私ね、何故か信長の記憶が所々あるみたいなの。
さっきも顔も知らない武将の名前をスラスラ言えたり、この天守閣まで無意識に歩いてたり。』
『それも俺達がこの時代に飛ばされたせい…かもしれない。元々いた信長が消えていることと関係あるのかも…。』
佐助が、うーんと唸っている。
『ねぇ、ところで佐助くんは今、誰にお世話になってるの?』
ひなが素朴な疑問を口にすると、佐助が気まずそうに視線をそらした。
『ごめん、ひなさん。今は言えない。その時が来たら必ず教えるから。
…この時代に飛ばされたってことは、元の時代に戻る方法も必ずあるはずなんだ。
俺はあの日の天候が関係していると踏んで研究しててね。
何か解ったら、また知らせに来る。今はなんとか信長になりきって。それじゃ!』
と早口でまくし立てると天井裏に消えていった。
『えっ、佐助くん、ちょっと待って…。』