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この世界はどうかしている。

第1章 1.


目の前の人は空を見上げて、壊れた家屋の木材の山から小さな焚き木を始め、携帯調理器具で何かを作り始める。
パチ、と爆ぜる焚き木に手を伸ばすと温かい。

「冷えるだろう。温まる飲み物を作るから少し待て」

すん、と鼻を鳴らすと薬っぽい臭いがする。コーヒーとも紅茶とも、スープとも言えない。
私は顔に出ていたんだろうか、その人は私と目があって煮込む小さな鍋に視線を移した。

「例えば……、冷えというのは免疫を下げる。だからこそ温めるべきだと俺は思う。それに君は女性だ、女性は特に冷えに注意しなくてはいけない」
『……』
「そうか、君はというのか。俺はネハンだ」

ネハンはぐつぐつと沸騰する薬臭い小さな鍋に小瓶に詰まった何かを、かき回す木のスプーンに振り掛けて少しずつ加えていく。何度かそれを繰り返して、味見をしている。
毒物では無いのは確かだった。

「出来たぞ、飲むと良い」

携帯していたカップの飲み口をハンカチで拭いて、鍋の中身を注ぐ。周りが寒いせいか湯気がたくさん出て、温かそうだ。
量がぴったりと一人分。入れ終えたカップを上を親指と中指で持って私へと突き出す。

「熱いから気をつけろ」

『えっと、これ…ネハンさんの分は……』

首を振られ、そのカップを両手で受け取る。成人する前の女の、ヒューマンの私にはエルーン男性の服はぶかぶかで、袖が手首以上も隠してくれる。
ずずっ、と一口飲むと熱い。そして青臭い味の残る甘い飲み物。

『これ、なんですか…?』

「君が悲劇を重ねない様に、せめてもの薬だ。たとえばそう、避妊薬とも言える……、あくまでも100%回避出来るという保証はないが…」

『知っていたんですね…』

「初見で、いや反応で分かった。、それを飲んだら別の島に移り住んで生きていく事を俺は推奨する」

『でも、私……。この島で…生まれ育ってただ、毎日平和で、幸せに生きてきただけなのに…捨てたくなんて…』
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