第4章 すれ違い
~三人称~
あれから1ヶ月経った
季節は夏目前。
まだ梅雨が明けきっていないのか、じっとりとした日が続いていた。
フラムには杏寿郎達が打ち合わせに来ていた。
「なつまつり…?」
陽奈子は首を傾げる。
「おー、近々毎年やってる夏祭りがあんだよ。毎年みんなで行ってるから、今年は陽奈子も一緒に行かねーか?」
そう、宇随が誘う。
陽奈子は目を輝かせた
「行く!!行きます!!うわー、お祭り大好き!」
「うむ!!俺も祭りは好きだ!わっしょいっっ!!」
杏寿郎の「わっしょいっっ!!」に陽奈子も一緒になって、わっしょいと言い始める。
あの一件から、まだ少しぎくしゃくはしているが、今まで通りにこうやって話が出来るようにはなっていた。
「えぇ。楽しみですね!今年は何か面白そうな事も起きそうな予感もしますし。」
しのぶはそう言って陽奈子をみた。
「そうだといいんだけどな。あいつらホントに鈍すぎて、俺はもう手助け出来る自信がねーよ…」
大きなため息をつきながら、顔を手で覆う宇随。
「ふふ、何か起きるといいですね?」
しのぶはもう一度、二人に視線を戻した。
「そうだ!陽奈子ちゃんは浴衣持ってる?」
蜜璃がそう聞く。
「…こっちで着る機会ないと思って、実家に置いてきちゃった。」
そうしゅん、となると蜜璃が「私に任せて!」とどん!と胸を叩く。
「当日、陽奈子ちゃんにばっちり似合う浴衣を持ってくるから、楽しみにしててね?♡」
蜜璃は趣味で着物や浴衣を着て出掛けることがある。だから着付けができるので、毎年女性陣の着付けは蜜璃がやっている。
「はぁ~ん、楽しみ♡陽奈子ちゃんの浴衣姿!何色がいいかしら?」
「陽奈子は甘露寺の着せ替え人形になってしまったな!はっはっはっ」
みんなで笑いながら、当日を楽しみにし、本件の打ち合わせを始めた。