第4章 すれ違い
~煉獄side~
あの事があってから、1週間が経った
何度も連絡しようとしたが、なんと言っていいかわからなかった。
それでも、陽奈子のことが心配で思い切って直接会おうと、アパートの前で待っていた。
「…きょ、じゅろ…?」
「…おかえり、陽奈子」
咄嗟に出た言葉がそれだった。
そうすると陽奈子はにっこり笑って「ただいま」と言う。
「どうしたの?あ、もしかしてまたフレンチトースト食べたくなっちゃった?」
「…いや、そう言う訳ではない。君が…心配だった。」
そう言うと一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに笑顔で答える
「や、やだな!私は全然大丈夫だよ!ほら、みんなに支えてもらってるし!」
正直、宇随や冨岡の言っていることがあまり理解出来ていない。
だが、陽奈子が辛そうにしているのは、あの少年のことだけではないのだと思っていた。
「何か…陽奈子の力にはなれないか?」
「…杏寿郎……優しいね。ありがとう!でも、大丈夫だよ」
そう言ってまた笑う。
どこか無理をしている気がするが、これ以上聞いてはいけない気がした。
「そうか…もし、俺に何か出来ることがあったら言ってくれ。君に頼られるのは嫌いじゃない、とても嬉しいんだ。」
そうふっと微笑むと、陽奈子が俯く。
「…い」
「む?なんだ?」
聞き取れなかったので、聞き返すと
「杏寿郎はずるいよ…」
顔を上げた陽奈子の瞳には涙が溢れていた。
「っ!よ、よもや!!どうしたのだ!?俺が何か気に触ることを言ったか?!」
泣かせてしまったのかと、焦っていると
「…っふ、ふふっ、なんでもないよ。びっくりした?」
今度は微笑みながらそう言う。
「…君は…本当に…驚かせることをする。心臓に悪いのでやめてくれ!」
「ごめんなさーい!」
そう言う彼女は、なんとなくいつもの陽奈子に戻った気がした。