第4章 すれ違い
~夢主side~
家まで義勇さんに送ってもらった私は、今日のことを洗い流すようにシャワーを浴びる。
鏡越しに映る自分の身体。
胸にはやや大きめの痛々しそうな火傷のあと。
でも
痛いのは火傷じゃなくて心が痛い。
隼人くんに傷つけられたこと
いや、それよりも、もっと辛かったのは
『大切な友達だ』
と、杏寿郎にいわれたこと。
「(私、すごく自惚れてた…特別だと思ってた…でも、杏寿郎にとって私は…ただの友達。)」
泣かないと思っても堪えきれずに涙は溢れてくる。
それを暖かいシャワーが流していく。
「…いつまでもこんなんじゃ、みんなに迷惑だよね。」
気持ちを切り替えなきゃと、出していたシャワーの蛇口をキュッと閉める。
そして鏡を見ながら自分に言い聞かせる。
「…片想いなら…自分の中だけで想ってる分には、別に…いいよね?」
自分の気持ちは、自身の中に留めると決意を固める。
だけど、いつか杏寿郎の隣に特別な誰かが並んだとき、私は…心から祝福出来るだろうか…
杏寿郎が幸せなら、それはそれで嬉しいことだよね、きっと。
気持ちを無理矢理切り替えて、お風呂場を後にした。
あれから1週間程経った。
仕事に没頭して、暇さえあれば勉強や練習をしていた。
そのせいか、不思議となんともなかった。
誕生会の日の次の日にお店に行くと、やっぱりみんな心配してくれた。優しいよね、みんな。
「もう平気だから、心配かけてごめんね!」
と、吹っ切れたように言う私を見るみんなの視線は悲しそうだった。
そんな顔してほしくない。
だから、私は笑って過ごすことにした。
そうすれば、空元気でもマシ…でしょ?
家に帰ると、アパートの前に誰かいる…