第4章 すれ違い
~三人称~
陽奈子が店を飛び出してからしばらくすると、義勇が戻ってきた。
「…っ!富岡っ、その、陽奈子は…」
「家まで送ってきた。」
それだけ言い、厨房に向かおうとする富岡。
すると、急に振り返り杏寿郎を見て口を開く
「…煉獄。受け身とは随分と余裕だな。」
「…?」
意味が分からず、黙っていると
富岡の顔がずいっと近くまで来た。
「…あいつを…陽奈子を想っているのは、お前だけだと思うなよ」
「!?ど、どういう意味だ…?」
「…そんなこともわからんやつに、説明する義理もない。」
そう言い放つと、玄弥に「悪かったな、後は俺がやる、上がっていいぞ」と言った。
「(おいおいおい!まさか富岡も陽奈子が好きなのか!?全く気付かなかった。どう見ても今のは宣戦布告だろ!)」
「(富岡さん、宣戦布告とはなかなか男らしいことをしましたね。陽奈子さんに想いを伝えたのでしょうか…)」
「…俺にはさっぱりわからねェ。」
「(こ、これが三角関係ってやつね!ドキドキするわー!)」
それぞれが思いながら、その日はお開きになった。
家に帰った杏寿郎は、陽奈子からもらったプレゼントをぼーっと見つめることしか出来なかった。
帰り際宇随に「少しお前も危機感を持った方がいい」と言われたが、理解できなかった。
「(なぜ富岡はあんなことを言ったのだろうか?なぜ宇随は危機感を持てと?どう言うことかさっぱりわからん!!だが、陽奈子のことは心配だ…大丈夫だろうか…)」
恋愛に疎い杏寿郎はただただ、言葉に翻弄されていくのであった。