第1章 出逢い
すっと、おばあさんの前に忘れ物を差し出す。
「まぁ、すっかり忘れていたわ。わざわざありがとう!」
「これがないと不便じゃないか、なぜここまで歩いてきて気付かなかったんだ?」
おじいさんが聞くと、おばあさんが頬を少し染めながら
「あなたと腕を組んでいたら、若い頃に戻った気持ちになってつい、杖を忘れてしまったんですよ。うふふ」
おじいさんも照れて少し頬を染めながら「わざわざすまなかったね。走ってきたんだろ?ありがとう。」と言ってくれた。
「いえいえ!お気をつけて!デート、楽しんで下さいね」と笑顔で見送ると
「またお店に行くね」と恥ずかしそうに言ってくれた
おばあさん達が歩こうとすると、ふとおばあさんが私を見つめた。
「どうしました?」
おばあさんに尋ねると
「あなた、笑顔がとっても素敵よ。すごく幸せな気持ちを分けて貰えたわ!その笑顔を忘れないでね。」
そう言ってまた二人は歩いていった
「笑顔が、素敵……かー、初めて言われたな。うわ、なんか恥ずかしいけど、嬉しいものなんだな…」
そう呟きながら小走りでお店に戻る。
そのやり取りをあの人に見られているとは知らずに…
「(なかなか脚が速いな!そして、とても優しく思いやりがある子だな!確かにあのご老人が言うように笑顔が素敵だ!!うむ、俺も負けていられない、頑張らねばな!!)」