第1章 出逢い
「(う、その笑顔は反則だ…)う、うん…わかった、し、しのぶ…ちゃん?」
少し恥ずかしくて、詰まってしまう
「少しずつ慣れていけばいいです、あ、もうオープンの時間ですね、皆さん!お店開けますよー」
そう言うと皆が返事をする。
気合いを入れ直し、記念すべき初出勤日の幕があがるのだった
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
オープンと同時にお客さんが何組か来店する。
この時間帯は割りと年配の夫婦が多いんだとか…
緊張しながらも、丁寧に接客をしていく
「オーダー入りました!5番にケーキセット2つ、ドリンクはコーヒー、レモンティーです!」
「お待たせいたしました、カプチーノです。お砂糖はこちらにございます。ごゆっくりどうぞ。」
「ありがとうございます、お会計が1800円になります。」
一組の老夫婦がお会計をして帰ろうとしている。
「とってもおいしかったわ、また来るわね。」
おばあさんが満足そうに微笑みながら、おじいさんと腕を組ながらお店を出ていった
「(素敵な夫婦…羨ましいな、どうしたら年を取るまであんなに仲良しでいられるのかな?)」
そんな風に思っていると次のお客さんが来店したので、お席にご案内する。
その時にふとカウンターに目がいった。
「(あれ?これってさっきの…)お、お客様申し訳ありません、少々お待ちください」
ぺこりと一礼をし、しのぶちゃんに声をかけた。
「し、しのぶちゃん!さっきお客さんが忘れ物をしちゃったから、届けてきてもいいかな?多分まだ近くにいると思うんだけど…」
しのぶちゃんは私の手元を見ると「それは大切なものですね、こちらは任せてください」と言って代わってくれた。
お店を出ると右、左どっちだと確認する。
するとちょうど角を曲がるのが見えたので、忘れ物を握って猛ダッシュする。
「(田舎育ちだから脚には自信がある!)っ!いた!」
先程の老夫婦を見つける。
「お、お客様ぁー!!」
大声で呼び掛けると振り返ってくれた。
「あら、フラムの…」
「はぁ…、はぁ…、ま、間に合ってよかったです!これ、お忘れ物ではありませんか?」