第4章 すれ違い
~富岡side~
店から出た俺は陽奈子が居そうな場所へと走る。
しばらく走ると、今にも消えてしまいそうに膝を抱えて俯いている姿を見つけた。
「…陽奈子。」
声をかけると肩が震える。
「…ぎ、ゆ…さん…どうして…」
恐る恐る、こちらを見る陽奈子の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「…っ!」
ぎゅっ
陽奈子の泣き顔に俺は堪えきれず、抱き締めていた。
「…義勇…さん?」
「俺が側にいる。だから、今は存分に泣くといい。」
そう言うと、陽奈子は声を上げて泣いた。
「…うっうぅ…うわーんっ…うわーっ……っく…」
どれくらい泣いていただろうか?
少し落ち着いた陽奈子がボソボソと話始める。
「…ごめんね、義勇さん。ありがとう。」
「気にするな。俺が好きでやっていることだ。」
「でも、どうしてここだってわかったの?」
そんなこと、お前が考えることなんてすぐに分かる。
「綾とケンカして店を飛び出したとき、何回もここに来て泣いていたな?」
「…っ、そ、そんなこと覚えてるんだね…」
少し恥ずかしそうに陽奈子が俯く。
「あぁ。あれは印象的だったからな。泣いていたと思ったら、次には腹が鳴り出した。」
「…も、もうあれは忘れてよー!!恥ずかしかったんだから!」
顔を真っ赤に染めながら俺を叩いてくる。
と、その手が止まる。
「…義勇さん。」
「なんだ。」
「いつもありがとう。もう…大丈夫。」
そう言うと陽奈子は立ち上がる。
「また明日から夢のために頑張るよ!」
「…ふっ、それでこそお前だ。…今日は特別に、俺が家まで送ろう」
そう言って陽奈子の背中に手を添えて歩き出す。
問うべきか迷ったが、もう確信に近いものがある。
陽奈子は煉獄のことが好きなのだろう…
薄々気付いていた。
勢いに任せて俺自身の想いを伝えようかと思ったが、陽奈子を困らせたくない。泣かせたくない。
だから自分の気持ちには、蓋をしておくべきだと思った。
陽奈子をタクシーで家まで送ると、また店に戻る。