第4章 すれ違い
~三人称~
"大切な友達"
その言葉が陽奈子の中で、木霊する。
「(杏寿郎が優しくしてくれてたのは…
友達だったから…)」
本人から聞くと、ずっしりと言葉が重くのし掛かる、
「陽奈子さん……(煉獄さん、本当にあなたは…)」
しのぶちゃんが陽奈子の肩に手を添える。
「…煉獄、お前なー(今チャンスだったじゃねーかよ!)」
宇随がそこは「彼女と言うべきだっただろ!」と心の中で叫ぶ。
とても気まずい、重苦しい空気が流れ沈黙が続く。
その沈黙を破ったのは陽奈子だった。
「…みんな、ごめんなさい。折角の、お祝いの席だったのに……ごめん、私……今日は帰る。」
そのまま陽奈子はこの場から逃げるように、走って店から出ていった。
「お、おい!陽奈子!!」
宇随が呼び止めるがその声にも振り返らず行ってしまった。
「……」
杏寿郎はただただ、俯き拳を握り締めることしかできなかった。
「…っ。」
それを見ていた義勇が行動を起こす。
前掛けを外し、勢いよく玄弥の胸に押し付ける。
「すまない、玄弥。後は任せた。」
そう言って陽奈子の後を追いかけた。
その行動に宇随もしのぶも何かを察したようだ
「(へぇー、こりゃ面白いことになったな)」
「(なるほど、そう言うことでしたか。)」
これはうかうかしてられないと思った宇随は杏寿郎に声をかける
「煉獄。お前、陽奈子のこと、追いかけねーの?」
そう杏寿郎に尋ねると
申し訳なさそうに眉を下げながら
「今の俺では陽奈子を余計に傷付けてしまいそうだ…それにこんな状況で何と声をかけるべきか、わからない…」
その声にはいつもの張りはどこへ行ったのか、と言わんばかりに弱々しいものだった。