第4章 すれ違い
~煉獄side~
思わず怒鳴ってしまった。
あれだけ自分が侮辱されているのにも関わらず、俺のために黙って我慢していたなんて…
「すまない…、陽奈子…怒鳴ってしまって。だが、君はそれでいいのか?あんなことを皆の前で言われ、黙っているなんて」
皆が事を理解したようで、心配してくる。
「あいつら…ひでーこと言いやがる…ちっ」
「…ゴミ以下だなァ。」
「…人として、最低です。」
「陽奈子ちゃん…大丈夫?あんなの私がぶん殴ってやるんだからっ!乙女を傷付けるなんて許せない!!」
口々に陽奈子を庇う言葉が聞こえる。
俺の怒鳴り声に気付いたのか、でかでかと陽奈子の在らぬことを話していた輩がこちらへ視線を向ける。
「おいおい、ケンカかよー?どこのどいつ…え!?陽奈子?!」
陽奈子の元恋人であろう奴が、陽奈子を見つけて驚いていた。
俺は我慢ならなかった。
「君は、人を侮辱して楽しいか…?」
「え…?」
立ち上がり、そいつの前に立つ。
「人が必死で貫こうとしている意思を、馬鹿にして楽しいか?」
「いや…別に馬鹿になん…」
気付いたら胸倉を掴んでいた。
「陽奈子は真っ直ぐで、とても純粋で、心の綺麗な子だ…そんなっ…そんな人の気持ちを踏みにじって何が楽しい…卑劣極まりない、許さんっ!!」
そう言うともう抑えが効かなかった。
片手で作った握り拳を振りかざしていた。
ばしっ
「やめとけ、煉獄。」
それを宇随が止める。
「むっ!?なぜ止める宇随っ!?」
「こんなところで騒ぎを起こしたら周りに迷惑がかかる。それに、こんな奴殴る価値もねーよ。クズだからな。」
そう言って宇随が睨みを効かせると、元恋人が口を開いた
「…は?うるせーな。あんた達には関係ねーだろ。もう終わった事だし、それにあんたは陽奈子の何?」
全く反省をしていない口の聞き方をしてくる少年は俺をみてそう聞いてくる。
「…む………大切な………と、友達…だ……」
そうぼそっと呟くと、少年の後ろから仲間が出てくる。
「もう行こうぜ。完全に萎えたわー」
そう言って少年達は店から出ていった。