第4章 すれ違い
「なんで別れたって言われてもなー、まー重い、堅い、鈍いの3拍子ってとこ?」
「なんだよ、それー!ウケんだけど!!」
「でも陽奈子ちゃん、そこそこ可愛かったじゃん!胸はなかったけどなー!ぎゃはは!」
「いやいや、俺は貧乳派なの!お前ら巨乳好きにはわかんねーよ!」
私の話だ。
でも、お付き合いしてたときの隼人くんとは随分と人が違うみたい…
私の知ってる隼人くんは優しくて、紳士だったのに…
「おーおー、赤裸々だな、向こうは。若いっていいなー!」
「宇随さんだって若者に入りますよ」
宇随さんとしのぶちゃんが向こうの話を聞いて、そう言った。
「今時の若者は、恥知らずだな!!だが、陽奈子と同じ名前の子の話をしていたな。不愉快極まりない」
そこに振れてほしくなかった。
隼人くんが次々に私とのことを大きな声で話す。
「最初からあいつとは遊びで付き合ったつもりだし、俺はヤれればそれでよかったんだけどなー、あいつ堅くてさー。」
「焦らされる方が燃えるだろ!」
「いやいや、焦らされるとか言うレベルじゃねーって!付き合って2ヶ月経ってもヤれないってどういう状況だよ?可笑しいだろ!」
もう何も考えられない。
周りの声が聞こえないで、隼人くん達の声しか聞こえなかった。
「それで結局別れたんだ?」
「いや、俺がぐいぐい押しまくって、ようやくってとこまで行ったんだよ!だけど服脱がせて胸みたら、あいつ傷あったんだよ。ここんとこ。引くだろ傷なんて。んで、結局ヤらせて貰えなくて「結婚するまでバージンでいたい」だってさ、萎えたわー」
やめて。
もう、やめて。
お願い…
皆が、杏寿郎が……
俯いて、震えが止まらない。
それに気付いた杏寿郎が、そっと大きな手を私の手に重ねてくれる。
顔を上げると、隼人くんの最後の言葉が杏寿郎の中で繋がったようで、額には青筋が立っていた。
見たことのない、顔だった。
「…陽奈子。なぜ、黙っていた?」
「…っ、だって…杏寿郎のお祝いの席…だし…私が黙ってれば済む話だよ…」
「そう言う問題ではないだろうっ!?!?」
勢いよく、私の両肩を掴み怒鳴る。
びくっ
初めて杏寿郎に怒鳴られ、体が跳ね上がった。
それに気付いた皆がこちらに視線を向けてくる。