第4章 すれ違い
カウンター越しに出された料理を受け取り、皆のところへ戻ろうとした時、私達とは反対の席にいたお客さんの話し声が聞こえた。
「どっかに可愛い子いねーかなー?」
「いやいや、隼人お前、去年の合コンの彼女はどうしたんだよ?」
「は?そんなんとっくに別れたわー」
ドクンっ
聞き覚えのある声…
それに"隼人"って、まさか…
確信がなかった。
だけど、聞き覚えのある声…
確かめたかった…
その席を振り返って見ると、そこにいたのは……
大好きだった、"隼人くん"。
どうしてここに…?
動揺を隠しきれないでいる私に気付いたのか、義勇さんが声をかける。
「陽奈子、どうした…?」
びくっ
名前を呼ばれ、今後ろにいる隼人くんがこっちに気付くんじゃないかとびくびくしてしまう。
「…な、…んでもないよ?これ持ってくね。」
後ろにバレないよう、杏寿郎達がいる席に戻る。
隼人くんとは、私が専門学生の時にお付き合いしてた人。
いわゆる"元カレ"。
友達がどうしてもって開いた合コンで知り合い、優しい隼人くんに一目惚れしてしまった。
その時が私の初恋。
席に戻り、昔のことを思い出していると杏寿郎が声をかけてきた。
「陽奈子、ありがとう。俺も何か手伝おう!」
そう言って主役が手伝おうとする。
「…っ!きょ、杏寿郎は主役っ、だから!ここにいて?」
いつバレてしまうかわからない、この状況に声が上擦ってしまった。
「…どうしたのだ?具合でも悪いのか?」
心配そうに私を覗き込む杏寿郎。
「…やだな、ホントになんでもないって!ほら、グラス空いてるよ?またレモンサワーでいいの?」
誤魔化すように、杏寿郎に飲み物を進めた。
すると、向こうの席から隼人くんの声が聞こえる。