第4章 すれ違い
その日家に帰ると、杏寿郎としのぶちゃんのあのシーンを思い出してもやもや。
「…杏寿郎としのぶちゃんって、付き合い長いんだっけ…」
今までのことを振り返ると、二人の関係性が気になる。
確かに杏寿郎としのぶちゃんは話してるときすごく楽しそうに話す。
若干、ボディタッチも多い気がするし…
それは付き合いが長いから、だよね?
でも、もしそれと違う特別な感情があるなら…?
「私も…もっと早くに杏寿郎に会ってたら、よかったな…」
ポスン
そう呟き、ベッドに横たわる
自分のなかで、嫌な方へと考えてしてしまう。
胸が苦しい、息が詰まる
ふかふかの布団がまるで慰めるように、私を優しく包んでくれる
気が付いたら涙が溢れていた
「…ぐすっ…っく…」
あぁ、自分はこんなにも杏寿郎のことで胸がいっぱいだったなんて…
好きになるのは…辛い…
暫く泣き続け、気付いたら泣き疲れて眠ってしまった。
朝日が昇っていることに気付き、カーテンを開ける。
「…っ、まぶしっ…そうだ、シャワー浴びなきゃ…」
昨日あのまま眠ってしまったので、シャワーだけだもと思い浴室に向かう。
「…うっわ…顔がすごいことに…」
泣き続けたことで、目がパンパンだ。
とりあえず、シャワーをさっと浴び、ギリギリまで目を冷やして出勤する。
「…お、おはようございます」
「あ、おはよう陽奈子ちゃん!今日も頑張ろうね、って?!どうしたのその顔!?」
蜜璃ちゃんが駆け寄ってくる。
「…いや、そ、その、映画!!感動もののやつ観たら泣けちゃって…」
苦しい嘘をつく。
「そうなんだ!びっくりしたよー!でも、その映画今度教えてね?♡」
信じてくれたみたいでよかった。
すると後ろからしのぶちゃんもやってきた。
「おはようございます。あら?陽奈子さん、その顔は…」
蜜璃ちゃんと同じことを聞いてくるしのぶちゃん。
昨日のことが過って目を逸らす。
「昨日、号泣するほどの感動映画を観たんだって!きっとキュンキュンしっぱなしなんだわ♡」
私が答える前に蜜璃ちゃんが答えてくれた。
「……そう、ですか。もう少し冷やしておいた方がいいですね。お店の準備はいいですから、奥で冷やしてきて下さい。」
しのぶちゃんに言われ、奥へ下がる