第4章 すれ違い
~富岡side~
陽奈子を駅までの送ると、店へ戻る。
歩きながら、昔のことを思い出していた…
俺には陽奈子と同じ歳の『綾』という妹がいる。
綾と陽奈子は小さい頃から仲がよく、俺もよく一緒に遊んだ仲だった。
だが、俺が中学にあがる頃、親の突然の転勤が決まり、陽奈子と離れることになってしまった…
引っ越ししても、綾と陽奈子は連絡を頻繁に取っていて、陽奈子のことを綾から色々聞かせて貰っていた。
そんなやり取りが続き、数年経つと、綾が自分の進路を専門学校へ行くと決めていた。
そのことを陽奈子に話すと、なんと陽奈子も同じ道を選択していたのだ。しかも綾と同じ学校を選んでいた。
その翌年の春には陽奈子もこっちに引っ越してきて、俺たちはまた再会することができた。
再会すると、少し大人びた陽奈子に胸が高鳴る。
妹のように可愛がっていたあいつが…
いつの間にか異性として意識していた。
自分の気持ちに気付くには時間はかからなかった。
俺は陽奈子が好きだ。
ずっと一緒だったから、あいつのたくさんのことを知っている。
すごく頑固者で、努力家で、だけど傷付きやすく、落ち込みやすい…
綾と専門学校の課題をしていた時も、お互い頑固者のせいで喧嘩をしては泣いていたこともあった。
そんな陽奈子を好きになった。
だが、陽奈子はきっと俺のことを"兄"としてしか見ていない。
そう分かっているから、自分の気持ちに蓋をして置くと決めた。自分の気持ちを伝えることで、困ったあいつの顔を見たくない。
だからあいつの側にいられるだけで充分だった
そう昔のことを思い出しながら、また自分を頼ってくれる陽奈子が好きだ、と…
また再確認してしまうのだった。